院長の挨拶

令和2年2月に医院を再開し、お陰様で病気の再発もなく元気に診療に励んでおります。私自身の入院や治療などの経験を以て、以前に増して患者様の思いに寄り添いお一人お一人に最適な治療ができますように心がけていく所存です。

当医院では整形外科一般の診療を行っていますので、頸椎、腰椎、膝、肩、及び、骨粗鬆症による圧迫骨折や手・足の骨折などの患者様が多くおられます。整形外科は分野が広範囲なため、必要に応じて京大病院などの専門の医療機関に紹介します。

皆様にはご不便をおかけいたしますが、再開業後の診療時間は、月曜日から土曜日までの午前中、及び、月曜日と木曜日の夜診とさせていただいております。

コロナ禍の中、院内では感染対策に努めてまいりますので、ご理解の程どうぞ宜しくお願い致します。


骨粗鬆症の早期発見の重要性について

(1)なぜ骨粗鬆症の診断や治療が必要なのか?

骨粗鬆症は“沈黙の疾患”と呼ばれ、骨密度が低下して骨折のリスクが高まっても、骨折を起こさなければ、症状がみられないためです。また、たとえ骨折が起きても命に別条がないと軽く考えられがちです。しかし、骨粗鬆症が進行し、骨脆弱性が高まり、何気ない日常生活動作でも容易に骨折を起こす状態になると、痛みのため、起き上がることが困難になり、寝たきりの状態になってしまうことが多くなってしまいます。実際、要介護に至る原因としては、脳血管疾患、認知症についで、3番目に多い疾患です。(図1)

介護の起因構成

特に京都府は骨粗鬆症検診率が低く、全国ワースト7位でした。

(2)どの位、生活機能や生命予後を引き下げるのか?

脊椎圧迫骨折では、1度骨折をした人はない人に比べて、腰背部痛が1.2倍、能力低下リスクが1.4倍になっています。さらに新しい圧迫骨折が起きると、腰背部痛が1.6倍、能力低下リスクが3.1倍と有意にリスクが上昇しました。 大腿骨近位部骨折では、約50%の人が自立歩行困難となり、骨折を生じた高齢者の大半が要介護となり、寝たきりになる割合が高くなっています。 

生命予後では、身体のすべての骨の骨折発生後で死亡リスクが約2倍増大し、なかでも大腿骨近位部骨折後の死亡リスクは約6.7倍、脊椎圧迫骨折後の死亡リスクは約8.6倍に増えていました。

(3)骨粗鬆症の診断時の注意点について

骨粗鬆症の診断は原則骨密度の測定です。症状やレントゲンより骨粗鬆症の可能性が高いと考えられれば、骨密度を測定します。骨密度の測定はX線を用いたDXA法、手の指を用いたMD法、超音波で脚のかがとを測る超音波法などがあります。現代ではDXA法が一般的です。骨粗鬆症の診断は骨密度が若い人の70%以下になれば骨粗鬆症であり、治療を始めます。この時に注意を要するのは、どの骨の骨密度を測定したかが重要です。測定する骨の部位によって骨密度が異なります。1例を紹介します。81歳の女性で、腰椎の骨密度は若年成人の83%、同じ年齢の111%ですが、大腿骨近位部の骨密度は若年成人の58%、同じ年齢の96%でした。女性の場合では、骨粗鬆症と診断される平均年齢は腰椎では82歳、大腿骨近位部では70歳、前腕の橈骨では73歳です。もっとも重要であり、比較的骨密度が低く出るのは、大腿骨の近位部です。 

(4)骨粗鬆症と骨折予防のための運動

2011年の報告では、筋力増強訓練,荷重・非荷重衝撃運動、エアロビクス、ウォーキングなどにより、大腿骨近位部あるいは腰椎の骨密度が0.84%から1.79%上昇しています。(表1)

予防と治療のガイドライン

骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年度版 ライフサイエンス出版 より

運動には有酸素運動と筋力トレーニングがあります。有酸素運動には、ウォーキング、水泳、サイクリングなどがあります。筋力トレーニングはスクワット、ダンベルを用いたトレーニング、背筋体操などがあります。

(5)骨に良い運動

1.背筋運動(図2)

負荷をかけた背筋運動は、加齢に伴う腰椎の骨密度の低下を抑制し、圧迫骨折の発生を減らすとされています。背筋を鍛えることで、腰痛も改善します。

背筋運動

2.踵上げと踵落とし(図3)

前足部及び足趾で踏み込む力が鍛えられるので、歩行の安定性や転倒予防に有効です。踵落としは、ゆっくりと踵を落とす運動で、大腿骨近位部の骨密度を上昇させる可能性のある運動です。

踵上げ

3.開眼片脚起立運動(図4)

ロコモティブ症候群を予防改善するための運動です。片足で立った側の大腿骨近位部に負荷がかかるため、その部分の骨密度が増強します。

片脚起立

4.スクワット(図5) 

ロコモティブ症候群を予防するための運動であり、大腿四頭筋の筋力を高め、 変形性膝関節症の改善にも非常に重要な運動です。

スクワット

5.ウォーキング(図6)

1日30分から60分で、2回から3回に分けてもいいです。できるだけ腕を振って、胸を張り、お腹をへこまして、踵から下りてつま先から蹴りだすように歩きます。

ウォーキング

(6)日常生活で気をつけること

1.適切なカロリー摂取と適度な蛋白質の摂取

2.骨に必要なカルシウム・ビタミンD・ビタミンKの摂取

3.ビタミンB群の不足も骨を弱くする

4.塩分の過剰摂取はカルシウムの腎臓からの排せつを増加するため、塩分の 制限を心がける

5.喫煙・過度の飲酒・コーヒーや紅茶の飲み過ぎによる大量のカフエインの摂取は骨に悪い影響を与える

コーヒーや紅茶は1日5杯以上飲む人では骨折のリスクが高まるとの報告があります。緑茶はカテキンが含まれており、骨形成促進の効果が期待され、骨折のリスクを下げるとの報告があります。

      

               医療法人山口整形外科医院    山口 壽一


              
プロフィール写真

医院長 山口 壽一

院長の経歴

昭和33年5月生
昭和58年3月 京都大学医学部卒業
昭和58年4月 京大病院整形外科入局
昭和59年6月 島根県玉造厚生年金病院整形外科医員
昭和61年5月 関西電力病院整形外科医員
平成元年4月 京大外科系博士課程入学
平成 5年3月 京大外科系博士課程卒業
平成 5年4月 京都警察病院整形外科医長
平成10年4月 当医院開業
○日本整形外科学会専門医
○京都大学医学学位博士